山形県発!暮らす人に合わせた街づくり

画像:壁いっぱいの絵の前に立つ追沼さんの写真

大学時代から郁文堂書店の再生や、誰でも簡単に組み立てられる屋台の設計、ワークショップの開催など、山形を拠点に様々な活動している追沼翼さん。今では全国各地で建築に携わっています。そんな追沼さんの山形での新たな活動や街づくりへの思い、これからの目標についてお話を伺いました。

現在の活動について教えてください。

街に住む一員として、街を元気にしたいという思いを持って建築や企画をしています。今年の6月に「すべての日に特別なひとときを作りたい」という思いから、コーヒースタンドを作りました。毎日楽しめるように良心的な価格で提供しています。以前着物屋さんとして使われていたお店をリノベーションしました。7月には、本を買える・コーヒーを飲める・持ち込んだ本を読めるお店も始めました。このお店は、日常の中でひと区切りつけたいときに気軽に来てほしい、そんな思いを込めています。

また、ホームセンターにある材料だけで誰でも簡単に作ることができる屋台のワークショップも全国で行なっています。これは、見た目も可愛く手軽に作れる屋台です。屋台をきっかけに難しそうな建築を身近に感じてもらうことが、建築の持続可能性になるのではないかと考えています。東京でワークショップをしたことでどんどん広まっていきました。いろいろな街で利用してもらえるのはすごく嬉しいです。この活動は、大学3年生の頃から行なっています。それと同時に、書店の再生プロジェクトもやっていました。山形に所縁のある文化人も通っていた書店でしたが、本の売買だけでなく、お茶をして談笑していたという書店の持っている歴史やオーナーに魅力を感じ、リノベーションをして2017年に再びオープンさせました。今は全体の責任者として関わっています。

画像:お話されている追沼さんの写真

活動の原点や大事にしていることはありますか?

僕の地元では、もともとあった商店街を壊して道路を作る計画がありました。でも、その計画が頓挫してアスファルトの状態で残っている街に、子どものころ違和感があったのです。書店の再生をしている大学生の時、山形市でも建物を壊して道路の幅を広げる計画があることを知りました。そのとき、当たり前にある街の風景を「個人の活動によって何か変えたい」、「ひとつのきっかけになってほしい」、そんな思いを持ちました。僕が街づくりを軸に活動している原点はそこだと感じています。その後、道路の幅を広げる予定だった場所はリノベーション強化エリアに変わりました。目に見えて街の計画が変わっていくことを体感したことで、もっと個人の活動で街に影響を与えられることを知ってほしいと思うようになりました。

大事にしていることは「その建物・建築物をいかに格好よく造るか」よりも、「建物を造ることでどんな影響を与えられるのか」ということですね。その街がどのように変わっていくのか、どんなきっかけを与えられるのかを大事にしています。

コーヒースタンドを作ったのもそんな思いからですか?

そうです。カフェがやりたかったというよりも、気軽に立ち寄って一息つけるお店が必要だと感じて、誰もやらないなら自分が作ろうと思って始めました。このコーヒースタンドがある通りは、山形駅から近く、夜は飲み屋街としてにぎわっています。しかし、日中は人通りも少なくお店もあまり開いていません。それだけでなく、2階・3階は使われていないお店がほとんどです。僕はこの通りを山形の暮らしが見える通りにしたいと考えていて、使われていない2・3階をオフィスや住宅にしたら面白いんじゃないかと思っています。そのひとつのきっかけとして、コーヒースタンドを作りました。

画像:コーヒースタンドの前に立つ追沼さんの写真

どんなものをつないでいると感じていますか?

土地と人ですね。僕は、土地だけでは価値がないと思っていて、そこに住む人やお店に価値や魅力があると考えています。このコーヒースタンドは、暮らす人と土地をつないでいると思います。人通りの少ない場所でワークショップをしたら、人が集まることによってその土地を知ってもらうきっかけになると思います。書店復興事業も、場所(土地)の歴史がありオーナーさんが素敵だから復活して、たくさんの人が訪れる場所になっていると思っています。これからも魅力的な人と街(土地)をつないでいきたいですね。

これからどんなことをしていきたいですか?

山形は都心に比べて人が少なく、規制も少ないから自由に活動することができると思っています。今ある街に自分たちが合わせるのではなく、住んでいる人たちが暮らしやすいように変えていくことが必要だと感じています。個人の活動でもこんな風に自由に街が使えるということを自分の活動を通して伝えていき、理想の街の提案していくことが僕の大きな目標です。街を使って何かしてみたい人の手助けができる、そんな存在でありたいですね。

街づくりを軸にさまざまな活動をしていますが、新しい言葉が必要だと感じています。街づくりは、今まであった街を新しく作るという意味だと思っていて、新しく作ることはそこにあった人々の暮らしや建物の歴史をなかったことにしている気がしていました。「これまでの歴史を大切にしつつ、新しく作るというよりは更新していくこと」がこれから必要になるのではないかなと思っています。山形で、新しい街の形をどんどん提案していきたいです。

追沼さん、ありがとうございました。

希望の光プロフィール

画像:追沼さんのアップの写真

追沼 翼(24)

東北芸術工科大学大学院2年
OF THE BOX inc. 代表取締役
Day and inc. 代表取締役
街に住む人の生活を豊かにするため、山形だけでなく全国で建築家として活躍の場を広げている。

取材を通して...

「街を自由に使う」という発想が新鮮でした。「自分のやりたいことはないから誰かのやりたいことをサポートすることしかできない」とおっしゃっていたのが印象に残っています。誰かの思いを、新たな建築という形で街に伝えるお仕事をしていると感じました。「当たり前にある街の風景をどうしたらもっと魅力的に変えられるか」、「日常をいかに楽しむか」常に考え続けていることが伝わってきました。山形という街を大切にし、私もさまざまな活動を行っていきたいと思いました。

山形大学2年 田中 晟佳