ACTION TO 2020

未来につなぐバトン

ユニバーサル・多様性

ダイバーシティの実現に向けた街づくり

ビジネス街の大手町を、すべての人に快適な街に。

画像:集合写真 左から藤村 誠(NTTクラルティ)、青木 洋子(NTTクラルティ)、池松 塑太郎(NTTクラルティ)、東田中 成佳(NTT都市開発株式会社)の4人。

2018年の夏に大手町2丁目に誕生した超高層ツインビル「大手町プレイス」。
人・モノ・情報がグローバルにつながる新たな「場」として世界に、未来に発信する、ダイバーシティの実現に向けた街づくりの先駆けとして、障がい者の意見を積極的に取り入れた「大手町プレイス」の開発と設計に関わった4人のキーパーソンにお話を伺いました。

画像:超高層ツインビル大手町プレイス

座談会メンバー

  • 画像:東田中 成佳(NTT都市開発株式会社)の顔写真。

    東田中 成佳

    NTT都市開発株式会社 開発本部 開発推進部所属
    2005年から大手町の再開発事業に携わり、JAビル・経団連会館、大手町フィナンシャルシティノースタワーを手がけた。2013年から大手町2丁目プロジェクトの開発に携わり、2018年に「大手町プレイス」として竣工を迎える。

  • 画像:藤村 誠(NTTクラルティ)の顔写真。

    藤村 誠

    NTTクラルティ 営業部 アクセシビリティ推進室所属
    頚髄を損傷し、車椅子生活となる。障がい者に役立つポータルサイト「ゆうゆうゆう」の企画運営に携わるほか、建築士の経験を活かしたバリアフリーチェックなども行っている。

  • 画像:池松 塑太郎(NTTクラルティ)の顔写真。

    池松 塑太郎

    NTTクラルティ 営業部 アクセシビリティ推進室所属
    生まれつきの視覚障がいで、現在はウェブサイトのバリアフリー化業務に従事。
    バリアフリーマップ調査や障がい理解研修などの講師も数多く務めている。

  • 画像:青木 洋子(NTTクラルティ)の顔写真。

    青木 洋子

    NTTクラルティ 営業部 アクセシビリティ推進室 兼 2020推進PT 所属
    学生時代の怪我により、弱視の視覚障がいとなる。「ゆうゆうゆう」の企画運営のほか、小中学校へのパラスポーツ体験授業や障がい理解研修などの講師も数多く務めている。現在、世界ランキング4位の日本ブラインドマラソン協会強化指定選手としても活動している。

画像左:東田中 成佳(NTT都市開発株式会社 開発本部 開発推進部所属) 画像右:池松 塑太郎(NTTクラルティ 営業部 アクセシイリティ推進室所属)

「大手町プレイス」誕生の経緯にコンセプトから関わる
「大手町2丁目プロジェクト」とは?

東田中大手町は東京のほぼ中心、皇居と東京駅にも近い日本を代表するビジネス街です。その大手町をオフィスワーカーだけではなく、近隣の方々にも気持ち良く使っていただける場所にしていこうと、7〜8年前から始まったのが「大手町2丁目プロジェクト」。“人をつなぐ、街をつなぐ、時をつなぐ” をコンセプトに、この計画が本格始動したんです。

藤村ユニバーサルデザインを前提にした再開発ですね。

東田中2018年に誕生したこの「大手町プレイス」の場所にはかつて、逓信ビルと東京郵政局、国際郵便局の3つのビルが建っていました。郵便・電信・電話というコミュニケーションサービスを網羅させ、国民生活の向上を図るという使命のもと、近代日本の中心的役割を担っていたんです。まさに、ユニバーサルは外せないキーワードです。

藤村公益性の高い場所ということもあって、障がい者の意見も積極的に取り込もうと、意見交換会が行われたわけですね。

東田中そうです。この「大手町プレイス」も、いろんな人に使ってもらおうという目的がありましたので、計画の初期段階から、みなさんの実体験をお聞きしたり、アドバイスをいただきながら、具体的な設計に生かしていきたいという意図がありました。

青木「大手町プレイス」は入り口から、他のビルとは違う。点字ブロックに誘導されてそのまま進むと、インターホンが設置されたエントランスに辿り着くので、呼び出せば、誰かが来てくれて、案内してもらえるんです。視覚障がい者には、とてもありがたいシステム。設備と人的対応をうまく結びつけた設計の好例です。
点字ブロックがある入り口は1箇所でしたが、他の入り口にもこういった案内が増えればいいと感じました。

池松インターホンの横にはフロアマップが点字で表示されている触地図もあります。健常者の方も、初めて来た建物はまず、地図を見て全体図を把握しておくと、行動しやすいでしょう。
私たち視覚障がい者も同じで、この触地図に触れることで、エレベーターやエスカレーター、トイレの位置などを確認できます。また、エレベーターには音声ガイドも付いていますし、大きめのフロアボタンも点字表示。細かな所まで良く工夫されているビルだなぁと思います。

画像左:点字ブロック誘導のあるインターホン 画像右:点字表示された触地図

画像左:点字ブロック誘導のあるインターホン 画像右:点字表示された触地図

みなさんの生の声を聞くことで、設備やプランニングに生かされた点は? 変更された箇所や新たに追加されたプランは?

青木すべての人に使いやすい街づくりということで、意見交換会では、授乳室のことも議題になりましたよね? 地下1階に作ったのは、どういう理由ですか?

東田中地下1階には、地上からも見渡せるサンクンガーデンという庭園付きのスペースがあって、オフィスワーカーがビルに出入りするエントランスの一つなのですが、車の往来や一般の通行者からも隔離されているので、同じフロアにある飲食店やクリニックを訪れた子ども連れの方が、子どもを遊ばせたりするちょっとした広場にもなっているんです。中には赤ちゃんを連れている方もいるので、授乳室も設けました。個室は女性のみの利用となりますが、オムツ替えシートや給湯器等は男性も利用可能です。

池松主要な動線の所々にベンチがあるのも良い事ですね。杖をついて歩いている人も、休憩できますし。

東田中大手町のような大規模化したオフィス街には、座る場所が少ないんです。だから、体の不自由な方はもちろん、高齢者でも、小さなお子さんを連れた方でも、ちょっと疲れた時に休んでもらえるベンチを設置しました。

画像左:授乳室の設置 画像右:青木 洋子(NTTクラルティ 営業部 アクセシイリティ推進室 兼 2020推進PT 所属)

画像左:授乳室

藤村店舗が並ぶ1階のセントラルプロムナードの中央エリアには、多目的シートのあるトイレもありますね。

東田中あのシートは、よくある折り畳み式では、持ち上げるのに力がいるので大変だと、設計の段階でご意見をいただいたので、まず、シートを平置きできる十分なスペースを確保し、片手で簡単にパタンと倒して設置できる跳ね上げ式にしました。

藤村災害時には、音声案内に加えて、フラッシュライトも点灯するようにしていただきました。これは、聴覚障がい者に災害の発生を伝えることが当初の目的ですが、お年寄りや健常者の方にとっても、わかりやすくなっていると思います。また、今年の4月にオープン予定の地下2階には、車椅子やベビーカーが余裕で入れる段差解消機も設置されました。階段には170cmほどの高低差があり、スロープを設置するには長い距離が必要ですが、段差解消機を設置することで、限られたスペースの中でもユニバーサルデザインを実現しています。

画像左:多目的トイレ 画像右:段差解消機

画像左:多目的トイレ 画像右:段差解消機

誰にでも使いやすいユニバーサルデザイン設計という点で特に配慮されているポイントは?

藤村実は、一概にユニバーサルデザインといっても、様々なシチュエーションを良く考慮しないと、人によっては使いづらいという落とし穴もあるんです。私は車椅子ですから、建物の中が誘導ブロックだらけだと、ガタガタして移動しづらい。

青木小さなお子さんをベビーカーに乗せて移動するお母さんたちにとっては、誘導ブロックが多すぎるとバリアになると思います。視覚障がい者にとっても、あちこちにあるとかえって分かりづらくて、逆効果なんですよ。

池松美しく整えられた植栽も、視覚障がい者にとっては危険ゾーン。歩道から誤って踏み込んでしまうことがよくあります。でも、「大手町プレイス」の植栽は、周りをプランターや高さのある立ち上がりで囲んでいるので、目が見えなくても、杖の先に当たれば、行き止まりだとわかります。

藤村すべての人の意見を取り入れるのは難しいことだと思いますが、この「大手町プレイス」の設計・デザインは、誰にでも安全、安心という観点で大切なことが、適材適所に生かされている。「いい塩梅」に良くできていると思います。

東田中「大手町プレイス」は、私どものNTT都市開発がUR都市機構と共同で建物整備をしたのですが、管理も弊社のグループのNTT都市開発ビルサービスが行っています。ですから、作って終わりということではなく、どんどん使いやすくしていくことがミッション。できるだけたくさんの人の意見を取り入れながら、育てていこうという思いがあるんです。

画像左:視覚障がい者が誤って踏み込んでしまうことを防ぎます。 画像右:藤村 誠(NTTクラルティ 営業部 アクセシビリティ推進室所属)

画像左:立ち上がりのある植栽

「大手町プレイス」が実現し、発信する理想の街づくりとは?

池松私は普段、ウェブサイトのバリアフリー診断を業務で行っているのですが、すべてが完成したページに追加でバリアフリー化をしようとしても、デザイン上の制約やコストなどの面から、なかなか対応が難しいという問題があります。
しかし、最初のデザイン段階からどうやったら使いやすいか、実際にページ制作を担当するお客様と意見交換をしながら一緒に作り上げたページは、理想に近いとても良いものが出来上がるという経験も多くしています。
今回、コンセプトや設計から意見を取り入れていただいた「大手町プレイス」もしかり、多くの人の声が技術に生かされてより良いものになっていくという意味では、建物や街づくりも同じなのでは?と思いました。

青木私はブラインドマラソンのランナーなのですが、障がい者スポーツには多くの人の手助けが必要です。でも、その手助けは、共感や共有できることがなければ、お互いに心地よくないし、長続きしません。だから、「大手町プレイス」のようなオフィスビルも、同じ思いで感じ合える人のつながりが重要。障がいのある人も、高齢者も、お母さんも、働く人も、みんなが心地よく共有できる場がある大手町の再開発が、未来の共生社会につながる一つのモデルケースになるといいですね。

東田中大手町は歴史がある街ですが、時代ともにライフスタイルが変わって、高層ビルもますます複合化が進んでいます。このビルも、上はオフィスですが、低層階には保育所まであって、いろんな人の流れがある。「大手町プレイス」という名称には、“場を創出する”という意味が込められているのですが、周辺地域の方々ともつながって、コミュニティを育む街づくりを理想としているんです。

藤村2020年はもうすぐですし、障がいのある人も外国から大勢来るでしょう。その中で、一人でも多くの方がこのビルに立ち寄って、日本の都市開発の良いイメージが海外にも伝わるといいですね。

東田中より良い未来につなげたいという私たちの思いが世界に届くように、これからも率直な意見を交換する触れ合いの場を共有していきましょう。

画像:「大手町プレイス」が実現し、発信する理想の街づくりについて語り合う様子。

ユニバーサル・多様性

ビルの設計や設備の話がきっかけでしたが、人と人とのつながりに、温もりが感じられる座談会になりました。
ダイバーシティの実現に向けた街づくりを実現するための様々な取り組みは、一歩一歩着実に、未来へ向けて続いていきます。